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90.「甘い」お薬
「ペニシリン―其他の抗菌性物質」
東大医学部内碧素研究会編
河出書房 初版 昭和21年7月15日 15,750円
本書は日本で公刊された最初のペニシリン文献です。本書の内容自体はいかにも研究書らしい化学的な研究報告に終始していますが、その誕生の背景が面白いのです。
現在、日本は世界一の抗生物質大国と聞きますが、その研究は戦争末期、東大の梅沢浜夫博士を中心とした陸軍の「碧素研究会」に始まりました。
昭和18年、同盟国であったドイツから一隻の潜水艦が機密資料をもって日本に寄港。そこにあった一冊の医学雑誌にペニシリンの臨床報告が掲載されており、それが日本における抗生物質研究の端緒となったようです。
当時、連合国には緊急を要する三つの課題がありました。レーダー、原子爆弾、そしてペニシリンの量産。戦傷による病死を防ぐための抗生物質研究は、敵味方を問わず戦時下最大級の研究課題で、当時は英国でこの画期的な新薬が開発されたという噂もながれていたのです。
当初、陸軍はこの話を信用せず、敵国の流したデマではないかとさえ疑っていたのですが、そんな折もおり、昭和19年1月に、「敵英国のチャーチル首相、新薬ペニシリンで救命」という記事が朝日新聞の一面を飾ります。肺炎で倒れたチャーチルがペニシリンによって奇跡的に救命した、と。
のちにこの記事は誤りだとわかるのですが、ともかくこの誤報によって、日本の国策として正式にペニシリン研究がはじまったのでした。そして驚くべきことには、およそ八カ月で世界にさきがけて、高純度のペニシリンの精製に成功。この抗生物質は「碧素」と名付けられ、量産されて大勢の負傷兵の命を救いました。
ちなみに「碧素」の名は、当時貴重品だった羊羹を懸賞に、一般公募されたんだそうです。また碧素を量産したのはお菓子で知られる森永製菓。つまり甘味のなかで国産第一号の抗生物質は誕生したのですね。
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ペニシリン 東大医学部内碧素研究会編 河出書房 1冊 昭21 其他の抗菌性物質 初版 本邦初のペニシリン文献 |
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2 |
相対会研究報告 第一組合相対会(小倉チヨ) 34揃 故小倉清三郎研究報告顕彰会復刻 第1号(昭27年9月20日)〜34号(昭30年12月20日) |
39,900円 |
3 |
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157,500円 |
5 |
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1,575円 |
6 |
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12,600円 |
7 |
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1,575円 |
8 |
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9 |
普法戦紀 王韜 脩道館 10揃 明20 和装活字本 題簽付 漢文書 少虫損有 清朝末期を代表するジャーナリストで思想家・王韜による編訳書の翻刻版。日本では普仏戦争といわれるが、この戦没の詳細な記録は当時最新の西欧世界の情報をもたらす重要書として中国、さらに日本でも広く読まれた。明治12年に |
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11 |
日本文芸の研究 実方博士古稀紀念論集編集委員会編 桜楓社 1冊 昭53 初版 函付 |
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12 |
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13 |
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12,600円 |
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普法戦紀 王韜撰・張宋良口訳 脩道館 10揃 明20 和装活字本 題簽付 漢文書 清朝末期を代表するジャーナリストで思想家・王韜による編訳書の翻刻版。日本では普仏戦争といわれるが、この戦没の詳細な記録は当時最新の西欧世界の情報をもたらす重要書として中国、さらに日本でも広く読まれた。明治12年には4か月ほど来 |
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20 |
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1,050円 |

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