7.レランドの日本図

■□在庫の中から・その⑦■□
レランドの日本地図

日本王国図（IMPERIVM JAPONICVM）
アドリアン・レランド作　アムステルダム刊　
銅版手彩色　約52×62㌢　
1715年　（失礼　売却済み）

　弊店では西欧の古版地図を扱っていないのですが、これはちょっと我が国の古地図と関連深いので飾ってあります。

　マルコ・ポーロの東方見聞録よりこのかた、アジアのそのまた海の彼方にあるという黄金の国ジパングの存在は西欧でも知られた存在だったようです。しかしながら大航海時代を迎えた彼等にとっても世界の果てにあるジパングは、誰も訪れたことのない幻の国でした。しかしそのまた後の時代になると、ザビエルらポルトガル宣教師たちの東洋への旅によって、しだいに日本の存在もあきらかにされていきます。同時に西欧の地図にも独立した国として扱われるようになり、幾種もの日本図が作られました。

　本図はそうした西欧製日本図の中の一枚ではあるのですが、作者のレランドは、東印度会社の高官を通じて日本製の地図（石川流宣作、元禄四年刊『日本海山潮陸図』と云われています）を入手。これを忠実に再現して作られたのが本図だそうです。つまり日本で作られた日本の地図を西欧で模刻した最初の地図が、このレランドの日本図なのです。

　ここからはちょっと余談。最近の研究ではその存在すら疑問視されているマルコ・ポーロですが、『東方見聞録』という本そのものも、昔から内容に真偽が入り混じっていることから偽書あつかいされることも多かったようです。確かに日本を紹介するのに、家屋敷はすべて金でできている。人々は偶像崇拝者で外見が良いが人肉を食べる習慣がある。などと記されていたら眉唾です。

　けれども学生時代にある人から、この本は作者が「伝聞」したことと「体験」したことを分けて読むとよく分るんだよ、と教えてもらったことがあります。作者が実際に体験した部分は嘘がないんだそうです。聞いたことを伝えられたそのままに記述したから日本についての記述もああなるんだ、ということでした。なあるほど。嘘を聞いたまま人に伝えたら、やはり嘘になるというわけですね。