41.武器よ、、、さらば

「武器よ・さらば」　Ａ・ヘミングウェイ　小田律訳　12,600円
天人社　初版　函付　昭和5年9月12日刊　

　どなたもご存じ、ヘミングウェイの名著、『武器よさらば』の初訳本です。直訳すれば、武器との決別とでもなりましょうが、この邦題、なんともかっこいい。この先、誰が訳してもおそらくこの題でしか通用しないことでしょう。
　
　本文の訳は上記の通り、当時ルパンなどの邦訳でならした小田律ですが、実はこの題名の名付け親は野尻抱影。御承知の方も多いでしょうが、作家・大仏次郎のお兄さんで、天文関係の著作で知られます。訳者の書いた序文の末尾に、

「序でながら、「武器よ・さらば」といふ訳名は、畏友野尻抱影氏が撰んでくれたもの」

　・・・・・・、としてあります。但し現在と違う個所が文字通り一点、「武器よ」と「さらば」のあいだに中点「・」が入ること。（函の方はハイフン「－」ですが）なんだろうこの点は。ううむ。きっと抱影さん、微妙な微妙なこだわりがあったんでしょう。