28.木戸孝允と西南戦争

木戸孝允書状　田中不二麿宛　毛筆82行　
　
明治10年3月3日付　巻子装箱付　
　箱表「松菊公與夢山公書　一巻」　210,000円
　
　西南戦争真最中の戦況と感想とを記した、文相・田中不二麿宛の極長文書簡。文部大臣に戦争の話は筋違いのような気もしますが、当時の文相は、今と違って総理の次くらいに重要なポストでした。

　「西隅もいよいよ暴挙に及び」「一月三十日、三十一日、二月一日、弾薬略奪の電報これあり候て、早速討伐の用意相決め候」と、西南戦争勃発の引き金となった、弾薬略奪事件の様子から語りはじめ、

　「果たして肥後へ乱入の次第にて少々手後れと相成り、万々一も肥後城を相囲候て肥前に突出候ときは、先ず九州一円はしばらく彼の有に属し候外これなく」と、鎮台のあった熊本城への薩軍の侵攻の様子を続け、さらに近年の政府の対応なども論じています。相手はなにしおう西郷さんです。木戸さん、かなりヤバいと感じていたのでしょう。

　そして末尾は「薩弾に触れ候て、斃れ候へば名僧の引導よりも好く往生の事と相考、初発より頻に討伐の任を切望請願御座候えども、終に行われず。近頃の遺憾、此事に御座候・・・・・・」

　薩摩の弾で死ねるんなら本望だ、俺も戦に行かせてくれと何度も頼んだんだけど駄目だった。これがどうにも悔やまれる、云々、と筆を擱いています。

　書簡の日付はこの戦争の最激戦となった、著名な田原坂の戦いがはじまったばかりの頃です。