27.宗教とウーマンリブ

高田集蔵私刊本　三種　63,000円

「街の聖者　山地願船伝」高田集蔵著並刊　竹隣書屋　孔版　限100　仮刷本　昭和26年5月27日

「改訂平仄新字典」高田集蔵編　竹林書屋　孔版刷　刊記不明（戦後）

「寂室語録管窺抄　第一巻」高田集蔵　限50　孔版刷　漢詩文集
昭和28年6月5日刊　

　高田集蔵は「蔽顔の聖者」「非僧非俗集」の著者、というよりも女性の社会主義集団・赤瀾会の中心メンバー、久津見房子の最初の結婚相手としての方が知られましょう。

　宗教者、高田集蔵は岡山の人。はじめキリスト教徒として大阪で家庭をもちましたが、高田の思想はやがて仏教に及び、クリスチャンの妻はこれを嫌って離婚。しばらく妹との二人暮らしでしたが、大正12年に縁戚の家から出奔してきた久津見房子と同居。二女をもうけました。しかし高田は働くことをせず、お布施行脚のような布教と放浪にあけくれる日々。生活のことを一切考えませんでした。

　やがて房子は家財を売り払い、子供を連れて離婚（籍は入っていませんでしたが）。その後、久津見は大杉栄の秘書となり、本格的に社会主義者の道へ進んでいくのですが、そのきっかけは高田の、
「お前は社会主義者なのだから、亭主に生活費を要求する前に雇い主に要求すべきだ」、という言葉に、あらためて自分が社会主義者であることを自覚したから、ともいわれています。

　高田自身はその後も各地を転々としながら、著作や雑誌を刊行。あらゆる宗教に通じながら、いずれにも偏せず、宗教家、思想家、著述家として生涯を送りました。

　戦後の高田は都下の武蔵境に住み、上記のような孔版の著作物を刊行しています。あとの二冊は平仄の字引と漢詩文集ですが、「街の聖者…」は香川県多度津の奇行僧・山地願船の言行録で、内容もすこぶる面白く、のちに復刊されています。