|
14.榎本武揚別れの手紙
 □■在庫の中から・その⑭■□
榎本武揚書簡(慶應四年)八月十九日付 一幅(売却済)
勝海舟、山岡鉄舟、関口良輔宛
榎本武揚の筆による、それほど長くもない書簡です。この人の書いたものが特に珍しいわけではありません。しかしながら、本品は特別。日付にご注目あれ。
幕末に幕府の海軍副総裁に就任した榎本武揚は慶応四年四月の江戸城開城に際し、新政府軍へ開陽丸の譲渡を断固拒否。そして同年八月十九日、開陽丸を旗艦とした榎本艦隊は、遊撃隊を乗せた運送船四隻を加えて品川沖を脱走します。
その後、奥羽越列藩同盟の崩壊後に行き場を失っていた大鳥圭介や土方歳三ら、旧幕府脱走兵を艦隊に収容して蝦夷地へ渡航。函館の五稜郭に拠って独立国家をめざします。しかしながら翌明治二年、圧倒的な軍備を誇る新政府軍に敗れて全面降伏。この函館戦争は維新最後の大花火といっても良いでしょう。ここいらの顛末は歴史小説やドラマの好きな人なら先刻ご承知のこと。
さて、手紙。弊店の意訳で恐縮ですが、この書簡を現代風に読んでみると、
「……私たちはこの度この地を大去します。実情は別紙に認めていますのでご回覧いただき、できれば鎮城府へお届け下さい。この件は私の方からも手づるをつかって軍務局へ差し出しているのですが、達しているかどうかすら不明なのです。面倒でしょうがあなた方へお頼みします。今回の一挙はもとより好ましいこととは思っていません。ただこれをもって永く皇国のため、一和の礎を開きたいがために為すのです。今後の形勢は言葉で議論するより行動するべきと決心し、この挙に及んだので、他意はありません。天が私を見捨てなければ、再びお話できる機会もあるでしょう……」
というような内容。つまりこの手紙は江戸脱走の当日、慶應四年八月十九日に、親しい勝海舟、山岡鉄舟、関口良輔(市中取締役頭)に宛てて書かれた、榎本の惜別と決意表明の手紙なのです。歴史の一幕が、釜次郎さん(榎本武揚)の肉声で聞こえてくるような気がしませんか?
ちなみに海舟、鉄舟はよくご存知でしょうが、もう一人の関口良輔(隆吉)という人は、かつて開国論を唱える勝をにくみ、刺殺を企てるも失敗。それが機縁となり、やがて山岡鉄舟の仲介で勝の親しい友人となった人物。海舟を除いてみな三十代の前半、若いですね。榎本が崩れ行く徳川幕府の中で、誰に信をおいていたかも窺えるようです。
関連商品一覧
[ 1件目から20件目までを表示しています。 ]
1 |
榎本武揚 安部公房 中央公論社 1冊 昭40 初版 函付 少ヤケ有 |
1,575円 |
2 |
勝海舟 木村毅 東亜春秋社 1冊 昭19 初版 少ヤケ有 |
3,150円 |
3 |
三木露風書簡 1冊 内海泡沫宛2通 明治40年7月頃(推定)墨書141行(巻頭欠)・ 墨書12行(前後欠) 明治43年7月21日 ペン書182行封筒付 明治40年の書簡は、詩論的な内容。明治43年の |
399,000円 |
4 |
中山慶親短冊 1冊 上藍下紫打雲 元和四年薨五三歳 筆蹟慶安手鑑に出づ |
31,500円 |
5 |
氷川清話勝海舟自伝 勝部真長編 広池学園事業部 1冊 昭46 重版 函背ヤケ有 |
1,260円 |
6 |
仇娘好八丈 春錦亭柳櫻口演 酒井昇造速記 やまと新聞附録 5揃 明23〜 やまと新聞八三六号(明治二三年七月一四日)、八五九号(同年八月 一〇日)、以下の附録として刊行。『髪結新三』の元になった落語。 |
84,000円 |
7 |
中村直勝書簡 各種分売 1冊 〓中村波奈宛墨書2通封筒付 昭41年6月3日・17日消印 〓上司海雲宛墨書便箋4枚現金書留封筒付 昭47年8月30日消印 |
6,300円 |
8 |
川村花菱草稿「妻の病」 2揃 毛筆半紙袋綴 「川村花菱文庫」「松竹大谷図書館蔵書」印有 (一)墨付196丁、(二)墨付193丁。また(一)の表紙に題と執筆の日付(明治40年7月〜9月にかけて執筆)、(二)の裏表紙には「明治四拾壱年四月十二日製本於日雨 此價七憶萬圓也 作者 川村花菱」 |
210,000円 |
9 |
サンデー日本 各冊分売 東日本新聞社 1冊 綴穴背少切傷ミ有 73号(昭33年9月1日)秘録日本降伏と占領軍・75号(昭33年9月21日)本土決戦の犠牲部隊・76号(昭33年10月1日)南方軍Z作戦の真相・77号(昭33年10月11日)Z旗再びあがる!・80号(昭33年11月11日)内乱寸前の陸海 |
1,575円 |
10 |
日本に於ける百年英一番館 1冊 昭34 安政6年〜昭和34年 非売品 函少ヤケ テープ跡有 ジャーディンマセソンアンドカムパニー(ジャパン)リミテッド編 |
3,990円 |
11 |
没後一年特別企画思い出の 池田満寿夫 池田満寿夫美術館 1冊 平10 図録 蛍光ペン線引有 |
1,050円 |
12 |
丸長おぼろ漫筆 長谷川鏡次 同刊行会 1冊 昭30 初版 函少ヤケ有 献呈墨署名識語入 「ラヂオに新聞に護高説を拝読して日本時代の絵の様なお姿を 思ひ出しつつ…」著者は深川木場の長谷川木材二代目。 |
2,100円 |
13 |
清佛海戰日記 毛鐵道人(仁禮敬之)著 春陽堂 1冊 明27 榎本海軍中将序 初版 フランス極東艦隊と清朝福建艦隊との衝突記録。 |
12,600円 |
14 |
会津八一書簡 1通 大正12〜14年 吉田儀左衛門宛 ペン15行封筒付 「拝啓 左の諸品御受取御とり被下度候 △絵巻物一巻△鞭一本△鉱金佛一體△桜皮手堤 以上はいろゝの時に拝借しおきしものなり此機会を以て返上いたし候或は右のうちにて御恵役の意味のものもありしあらむかとも存じ |
63,000円 |
15 |
新局九尾伝 二世春水、山々亭有人作 二世国貞、芳虎画 1冊 慶応〜明治 初篇〜一三篇迄揃 慶應二〜明治四年 合巻物 保存良 |
157,500円 |
16 |
貞操節義明治烈婦伝(一) 松村春輔 1冊 明14 題簽少擦 絵入 小本 榎本武揚君の室〜木戸松子(孝允室)迄五〇名収録。 |
3,990円 |
17 |
那須良輔書簡 2通 北條誠宛 墨二枚・墨一枚及び 北條誠絵一枚付 |
26,250円 |
18 |
長三洲(光太郎)書状幅 1幅 錦織周泉宛三月二十日付 墨書18行 木箱少傷ミ有 未得拝唔候共、彼是… |
52,500円 |
19 |
最後の サムライ山岡鉄舟 教育評論社 1冊 平19 初版 カバー帯付 |
1,575円 |
20 |
住吉だより 岡枝健一 4冊 一号(昭二七年三月)〜四号 (同年八月) 小本 平山蘆江ほか |
8,400円 |

 |
|
有限会社 中野書店
東京都公安委員会
許可第301029202665号
書籍商・美術品商
|