151子規には貶されちゃったけど

151子規には貶されちゃったけど

日本全国徒歩旅行日記　東北之部　中村呑牛筆　157,500円
表紙少ムレ　墨付163丁　青表紙に「此記行（ママ）ハ中村呑牛氏ノ記行也」紙片付。

本品は二六新報の記者でのちに東京市議会議員、また『大東京年鑑』の編著で知られる呑牛こと中村舜二が、明治34年に二六新報に連載した東北一周徒歩旅行の稿本です。

ここで「日本全国」と銘打ってあるのは、同時期に血達磨の九州旅行、中村楽天の関西旅行が並行して二六新報に連載されているためでしょう。このうち楽天の『徒歩旅行』のみ翌35年に正岡子規の序を付して俳書堂より刊行されていて、子規はこの序文のなかで楽天の紀行文を褒め、かわりに血達磨の文章を「豪傑志士を気取る処は俗受けのする処であってその実その紀行の大欠点」とし、さらに残念ながらこの東北旅行も「その文章は全く幼稚で別に評するほどのものではなかった」と評しています。

子規の言う通り確かに平板な文章でしょうが、新聞記者らしく東北（というより東京以北）各地域の産業や風俗、人々の生活ぶりを淡々と描いており、今の眼で見ると百年前の様子が興味深く読めます。