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102.続・古本探偵?「男」 林禮子 改造社 初版 発禁本
昭和3年4月25日 21,000円 戦後版(白鯨社 昭和23年12月15日)共 女子医専の学生が教授との不倫から身を持ち崩し、芸者、女記者、最後は横浜の売春宿へ、という転落のストーリー。ここで戦後版も一緒にしているのには意味があるんです。 主人公の芸者が若い役者の男と道ならぬ一夜を過ごした翌朝に、また、「朝酒に好い気持に酔ひつぶれた×××××」。おおお、それからどうした?(笑)。初版本にはこのように、いたるところに×××(伏字)があって気をもたせます。そこで伏字を埋めてある戦後版の該当箇所をいそいそ開いてみると、 「(酔ひつぶれた)二人は、また次の間のおしたくの中へころげこんでしまった」んですと。これだけ。なあんだ、どうしてこれが伏字なんだよ(笑)。当時はこれでもイケナイ箇所だったのですね。 煽情的な個所にばかり気をとられてはいけません。実はなかなか力のある文芸作なのです。初版には何の記述もありませんが、作者は新橋の待合の女中さんだとか。「何がいやだと云って、人の原稿をよまされるほど厭なことはあるものでない」木村毅が、たった一度の例外としてその出来に感心し、改造社に紹介。めでたく出版成ったものの、発禁処分となってしまい、このあとの『火炎を蹴る』という作品も発禁。けっきょく埋もれた作家となってしまいました。作者の「林禮子」、おそらく林芙美子を意識したペンネームでしょうが、今では本名も来歴もまったく不明なのです。 戦後版の木村毅の序文には、この初版本出版の経緯が記されています。また伏字箇所については、当初はそのままでしかたがないとしていたものの、斎藤昌三がたまたま原稿に照らして伏字を埋めておいた本を所持していて、戦後版刊行の際に使うことができたのだそうです。 ……さて、ここまで書いてきたら、またぞろ疑問がわいてきました。斎藤昌三、木村毅というライン、どうも臭う(笑)。在庫の中から101『歌集 秘帳』のところでも、作者の存在に疑問を呈したのですが、禮子さんに関するアリバイの少なさ、関係者が限られている密室のような状況、そして艶本っぽい内容まで。なんとなく状況が似ていませんか? つまり、こう言いたいんです。・・・・・・『男』『火焔を蹴る』の作家・林禮子って、実在の人だったのでしょうか!? しかも、この戦後版、もともとは坂本篤が刊行する予定だったとも聞きます。ううむ、ここらもたっぷり怪しい。きな臭いぞ。ええい、この程度のトリックで、古本探偵の目を、ごまかせると思うか!(笑)。 いや、もし林さんが本当に戦災で行方不明になったのでしたら、大変申し訳ないのですが、私には、『秘帳』の湯浅真沙子さんの件も含め、あの世とやらで、斎藤さん木村さん、そして坂本さんたちがニヤニヤしているような、そんな気がしてならないのです。 関連商品一覧
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| 2010年9月10日 金曜日 | 9276053 リクエスト (2005年9月25日 日曜日 より) |