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古本倶楽部287号 お喋りカタログ13 |
101.古本探偵?「歌集 秘帳」 三種
湯浅真沙子 川路柳紅編 18,900円 風俗文献社版 初版 函帯付 昭和26年11月15日 有光書房版 普及版帯付 及び限300柳紅ペン署名入 函付 昭和31年12月15日 同性愛の体験や新婚生活など、自らの性愛体験を率直に歌った戦後唯一の発禁歌集。話題性があるので、古書の世界ではわりと知られた本です。刊行時に、すでに著者は他界しています。彼女の知人である「中村」という人が、書き残した原稿を川路柳紅に送ったことが本書出版の契機になったのだそうです。柳紅の序文によると、著者とは門下の詩人・倉橋弥一の紹介で昭和18、19年くらいに会ったきり。富山の出身で日大の芸術科に通っていたらしい、ということくらいしか知らないとのことでした。 また歌の内容から、作者は見合い結婚をしたものの、すぐに夫と死に別れ、自らも早逝。川路が会った当時で二十歳そこそこにしか見えなかったらしいとのことなので、三十歳前には亡くなられたようです。この歌集、平成12年に復刊もされています。もちろん現在の目で見れば、発禁というほどの表現ではありません。 ところで、なのですが、この著者、本当に実在した人なのでしょうか? 復刊にも著者を探し当てられなかった旨が記されているのですが、それにしても今もってその正体がわからないのは少々不思議。 以下は勝手な憶測ですが、前々から疑問に思っていました。疑義を呈するには理由をあげねばなりませんね。歌そのものからは具体例をあげにくいのですが、性に対する考えに、どことなく女性ってこうは思わないんじゃないかなあ、と感じさせる箇所があります。しかし私はその道の専門家でも、歌に通じているわけではないので、何ともいえない。ただし他にも下記のような疑問があるのです。 ひとつに、紹介者の倉橋弥一は戦後すぐ交通事故で他界。つまり川路柳虹と原稿を送りつけた「中村」という故人の知己以外、直接に作者を知る人が誰もいない状況なのです。(故意にアリバイを抹消か……?) また歌中に「川路龍子」の名が一箇所だけ出てきます。今ではともかく、往年の龍子はターキーこと水の江瀧子の後輩にあたるSKDのスターでした。少女の同性愛的な思いを歌にしているので、それほど不思議はないのですが、川路龍子=川路柳紅を連想させますよね。(読者への手がかりではないか……?) さらに上記の本には、いずれの版にも扉に著者の筆跡(原稿)が掲載されていて、確かに同じ手に見えるのです。ところが26年版と31年版を見比べてみると、26年版の方が原稿用紙の写真版で、31年版はその字を便箋風の紙に乗せているのですが、同じ筆跡でいながら、明らかに字が違っている箇所があります。こんなことないはず。(これも手がかりか……?) いずれも状況証拠にすぎません。しかし、よく探せばまだ何かあるかもしれません。出版の際に川路が相談した相手が斎藤昌三。再出版したのが、かの坂本篤。この辺りもなんとなく、「遊び」の匂いがしませんか? 実はこの『秘帳』、本来はもっと露骨な表現箇所があって、その訂正箇所を示す「特別会員用の別刷り」というのもあるのだとか。では本書はいったい誰が手を加えたのでしょう。 ただ、川路さんがこんな歌を作ったのかというと、どうなのかなあ……ふうむ。 関連商品一覧
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2023年6月 5日 月曜日 | 48664302 リクエスト (2005年9月25日 日曜日 より) |