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101.古本探偵?

101.古本探偵?
「歌集 秘帳」 三種 
 湯浅真沙子 川路柳紅編 18,900円
 
 風俗文献社版 初版 函帯付
 昭和26年11月15日
 
 有光書房版 普及版帯付
 及び限300柳紅ペン署名入 函付 
 昭和31年12月15日
 
 同性愛の体験や新婚生活など、自らの性愛体験を率直に歌った戦後唯一の発禁歌集。話題性があるので、古書の世界ではわりと知られた本です。刊行時に、すでに著者は他界しています。彼女の知人である「中村」という人が、書き残した原稿を川路柳紅に送ったことが本書出版の契機になったのだそうです。柳紅の序文によると、著者とは門下の詩人・倉橋弥一の紹介で昭和18、19年くらいに会ったきり。富山の出身で日大の芸術科に通っていたらしい、ということくらいしか知らないとのことでした。

 また歌の内容から、作者は見合い結婚をしたものの、すぐに夫と死に別れ、自らも早逝。川路が会った当時で二十歳そこそこにしか見えなかったらしいとのことなので、三十歳前には亡くなられたようです。この歌集、平成12年に復刊もされています。もちろん現在の目で見れば、発禁というほどの表現ではありません。

 ところで、なのですが、この著者、本当に実在した人なのでしょうか? 復刊にも著者を探し当てられなかった旨が記されているのですが、それにしても今もってその正体がわからないのは少々不思議。

 以下は勝手な憶測ですが、前々から疑問に思っていました。疑義を呈するには理由をあげねばなりませんね。歌そのものからは具体例をあげにくいのですが、性に対する考えに、どことなく女性ってこうは思わないんじゃないかなあ、と感じさせる箇所があります。しかし私はその道の専門家でも、歌に通じているわけではないので、何ともいえない。ただし他にも下記のような疑問があるのです。

 ひとつに、紹介者の倉橋弥一は戦後すぐ交通事故で他界。つまり川路柳虹と原稿を送りつけた「中村」という故人の知己以外、直接に作者を知る人が誰もいない状況なのです。(故意にアリバイを抹消か……?)

 また歌中に「川路龍子」の名が一箇所だけ出てきます。今ではともかく、往年の龍子はターキーこと水の江瀧子の後輩にあたるSKDのスターでした。少女の同性愛的な思いを歌にしているので、それほど不思議はないのですが、川路龍子=川路柳紅を連想させますよね。(読者への手がかりではないか……?)

 さらに上記の本には、いずれの版にも扉に著者の筆跡(原稿)が掲載されていて、確かに同じ手に見えるのです。ところが26年版と31年版を見比べてみると、26年版の方が原稿用紙の写真版で、31年版はその字を便箋風の紙に乗せているのですが、同じ筆跡でいながら、明らかに字が違っている箇所があります。こんなことないはず。(これも手がかりか……?)

 いずれも状況証拠にすぎません。しかし、よく探せばまだ何かあるかもしれません。出版の際に川路が相談した相手が斎藤昌三。再出版したのが、かの坂本篤。この辺りもなんとなく、「遊び」の匂いがしませんか? 実はこの『秘帳』、本来はもっと露骨な表現箇所があって、その訂正箇所を示す「特別会員用の別刷り」というのもあるのだとか。では本書はいったい誰が手を加えたのでしょう。

 ただ、川路さんがこんな歌を作ったのかというと、どうなのかなあ……ふうむ。
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1 韮菁集 三種
土屋文明 青磁社 1冊 昭20年3月29日(後記のみ 刊記無)版/昭和21年7月5日  札幌青磁社 カバー付/昭和21年7月15日 青磁社(東京)。  いわゆる「戦中版」と称される20年3月の版には21年版には含まれない多くの戦争関連の歌を収録。
84,000円
2 歌集秘帳
湯浅真沙子 川路柳虹編 有光書房 1冊 昭32 初版 函付
2,100円
3 枡冨照子歌集
2冊 『月鳳里の歌』竹柏会 初版 函付(昭和16年4月11日)    『稔』発行所 非売品 夫婦函付(昭和18年12月31日)
6,300円
4 旅之歌
間島弟彦 1冊 函少擦有 大正9年8月序   (奥付無) 間島冬道の子。父と同じく銀行家(三井銀行常務)で歌人。     おそらく生前唯一の歌集。
8,400円
5 書下し長篇探偵小説全集
江戸川乱歩・大下宇陀児他 講談社 11揃 昭30 初版 函少擦 シミ有 1・十字路(江戸川乱歩)2・見たのは誰だ(大下宇陀児)3・魔婦の足跡(香山滋)4・光とその影(木々高太郎)5・上を見るな    (島田一男)6・金紅樹の秘密(城昌幸)7・人形は なぜ殺される (高木彬光)9・夜獣(水谷準)10・十三
26,250円
6 秘版歌麿
歌麿研究会編 紫書房 1冊 昭28 日本浮世絵大集2 限定版 帙外函付 小冊子共
3,150円
7 玉川一郎草稿 三種
1冊 ポンポン蒸汽で千二百海里(小スンダ列島周航記)」ペン書400字詰178枚揃(昭和23年5月20日完)/「シャレとは辛い−随筆」ペン書400字詰201枚揃、及び著者略歴200字詰4枚付(昭和31年)共/「大正・本郷の子」ペン書400字詰328枚揃(昭和52
210,000円
8 園信一郎訳本 三種
3冊 全て初版 「マリア・シャプドレーヌ」ルイ・エモン 改造社 昭7年7月23日/「白き処女地」(同改題本)ルイ・エモン/トーマス・アベ    (園信一郎)訳 カバー付 朋文社 昭31年2月15日/     「蟻の生活」メーテルリンク 改造社 昭7年8月19日
12,600円
9 歌集秘帳
湯浅真沙子 風俗文献社 1冊 昭26 初版 函帯付 少ヤケ有
6,300円
10 歌集秘帳
湯浅真沙子 風俗文献社 1冊 昭26 初版 函帯付 少ヤケ有
4,725円
11 昔の人 今の状況
桑原武夫 岩波書店 1冊 昭58 初版 函帯付
1,260円
12 没後一年特別企画思い出の    池田満寿夫
池田満寿夫美術館 1冊 平10 図録 蛍光ペン線引有
1,050円
13 みんなが見ている前で
  藤原審爾 鱒書房 1冊 昭30 占領下日本女性受難の記録 初版 カバー傷ミ 蔵印有
1,575円
14 何が彼女をそうさせたか?
藤森成吉 改造社 1冊 昭5 重版
2,100円
15 歌集秘帳
湯浅真沙子 風俗文献社 1冊 昭26 初版 函少擦有
4,725円
16 火野葦平書簡
1冊 新潮社小林博宛 昭和32年〜昭和35年1月まで ペン書6通(内封筒1通) 出版記念会案内状・昭和35年新年会(誘惑状)の葉書付。 火野葦平選集出版記念会(お誘ひ口上 昭33年4月)案内状、昭和35年新年会出欠(誘惑状)の葉書付。主に稿料、花と龍、虹の花び
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47,250円
18 思い出すこと忘れえぬ人
桑原武夫 文芸春秋社 1冊 昭46 初版 函帯付 少ヤケ有
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19 歳旦歳暮 三種
弄時庵編 3冊 横版 絵入 文化四年、文化十一年(裏表紙欠)、文化十五年の三種       いずれも同形式で、文化十五年版の奥書には、京都室町の「書林橘仙堂平野屋善兵衛」の版元名有。
157,500円
20 日本耶蘇会刊行書志
アーネスト・サトウ 1冊 大15 私家版(1888年)復刻版 解説(明治文化研究会編 警世社書店 非売品)共 帙付。     原寸大の図版とサトウの英文解説による「切支丹版」書誌。
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